このページは、親御さん・先生・大人向けです。
はじめに

このサイト「どうやって?」は、10代の子どもが将来の仕事について考えはじめたときに、すぐに探せる場所があったらいいなと思って立ち上げました。
ここでは、「そもそも仕事の就き方ってそんなに大事なの?」という部分を、公的な調査をもとに話していきます。
なぜ「仕事の就き方」が必要なのか
世の中には、子ども向けの仕事図鑑とか、職業を紹介する本やサイトがいっぱいありますよね。
でも、そのほとんどは「どんな仕事?」という紹介にとどまっていて、「どうやってその仕事に就くの?」という肝心な部分があまり書かれていません。
実はこの就き方の見えにくさは、私たちの感覚だけではなく、さまざまな調査でも課題として指摘されています。
子どもは情報を得られていない
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所による「子どもの生活と学びに関する親子調査」では、子どもたちが進路や職業について考えるうえで、必要な情報を十分に得られていない状況があると報告されています(調査レポートPDF)。
この調査は小学生から高校生までを継続的に追いかけるもので、子どもたちの進路観がどう変化するかを見ていますが、「進路や職業の情報が足りない」という指摘ははっきり見られます。
高校生でも情報不足に悩む
ベネッセが行った高校生調査でも、「進みたい進路に関する情報が不足している」「何を基準に選べばいいか分からない」という悩みが増えていると報告されています(『高校生活と進路に関する調査』PDF)。
2018年と2024年を比べると、2024年の方は約10ポイントも増えていて、進路を考える機会が増える一方で、決め方や探し方に不安を抱える生徒がむしろ増えています。
あとからでは間に合わない職業もある
子どもにとって、その仕事の就き方が不足していると困る理由のひとつに、年齢制限・身体条件などを知らないまま大人になると、選べなくなる職業があるという点があります。
例えばパイロットを目指す場合、航空大学校では出願できる年齢が決められているほか、入学時点で一定の身体条件を満たしている必要があります(独立行政法人航空大学校:募集要項)。
※パイロットになるには航空大学校以外のルートもあります
騎手(ジョッキー)の場合、JRAの騎手課程には応募できる年齢や体重などの基準が設定されています(JRA競馬学校:募集要項)。
※ジョッキーになるにはJRAの競馬学校以外のルートもあります
こういった内容は、「高校卒業後に初めて知った」「大人になってから知った」では、手遅れになる可能性があります。だからこそ、できるだけ早い段階で「どうやってその仕事に就くか」の道筋を知ることが大切なんです。
しかし、この問題は今に始まったことではないはずですよね。本当にこうした情報が少ないのでしょうか?
公的な職業情報が届いていない
実は、必要な情報自体はしっかり存在しています。ただ、まだ広く知られていないだけなんです。
job tag の存在
日本には、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト、job tagという公的なデータベースがあります。
新しい仕事は常に生まれているため、ここに世の中の全ての職業について載っているわけではありませんが、このページの投稿時点では541の職業について、仕事内容、求められる力、関連資格、統計データなどがとても丁寧に整理されています(職業情報提供サイト job tag)。
ただ、令和6年度の活用促進事業における調査では、job tag の認知度は労働者全体で10%ほど。1年以内に転職経験がある層でも40%程度にとどまっています(労働者調査報告書PDF)。
つまり、子どもはもちろん、大人にとっても意外と知られていないのが現状です。それに、認知が拡大していったとしても、こうした大規模データベースの普及にはもう1つ問題があります。
使いづらいサイト構造
それは使い勝手です。
はっきり言ってjob tagの情報量はとても多く、時間をかけて読めばものすごく参考になります。しかし、その情報量ゆえに、長い文章を読むことが得意ではない方にとっては、負担に感じられる場合もあります。
また、こうした大量の情報と使い勝手はトレードオフの関係にあるのか、job tagの使用調査に関する公式なレポートでも、「目的の情報にたどり着きにくい」という、使い勝手に関する課題が挙げられています。(職業情報提供サイト報告書PDF)。
こうした使い勝手の問題は子どもに限らず、大人でもどこに何があるのか直感的に分かりづらいため、せっかく質の高い情報が揃っていても、必要な情報にスムーズにアクセスできなければリピートしづらく、人にも勧めづらいため、結果的に普及しづらいのだと思います。
そこで、このサイトでは情報を絞り、使い勝手を重視したサイトを目指しています。
このサイトが目指していること
素早く知りたい情報にアクセス
メインコンテンツは職業ページとコラムの2つだけに絞っています。
職業ページはトップページで検索できる他、「職種」や「スキル」といった、大人が転職サイトで使うようなカテゴライズではなく、「人を助ける仕事」「ものを作る仕事」といった、よりイメージしやすい表現を心がけています。
また、コラムは「仕事ってなに?」「職種ってなに?」「起業ってなに?」といった仕事をテーマにした読み物になっていて、10代の方が読んでも理解しやすいよう文章で紹介しています。
「就き方」に重点を置く
このサイトで特に重視しているのは、「どうやってその仕事に就くか」という部分です。資格は必要なのか、どんな進学ルートがあるのか、別の入り口はあるのか、といった就職までの道筋を分かりやすくまとめています。
ただし、長すぎると読む気がなくなってしまうので、重要なポイントだけをかみ砕いて紹介しています。
仕事の会話のきっかけに
さまざまな職業の就き方を知ることで、
・子どもが自分の興味や憧れを言葉にしやすくなる
・友だちや家族で将来の話がしやすくなる
・学校や家庭で進路について話すきっかけが増える
といった、小さな変化を生むきっかけにもなります。このサイトがきっかけで、友だちや家族、学校でこんな話が出るようになると嬉しいですね。
参考にしている主な情報源
基本的にはjob tagを参考にしていますが、載っていない職業については海外のものや、別の情報源を元にまとめています。
日本
・厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User
海外
・U.S. Bureau of Labor Statistics “Occupational Outlook Handbook (OOH)”
https://www.bls.gov/ooh/
・O*NET OnLine(U.S. Department of Labor)
https://www.onetonline.org/
おわりに
最後の挨拶の前に、あえて触れてこなかったお金とAIの話について少しだけ触れておきます。
お金(年収)について
このサイトでは基本的にお金の話をしていません。
しかし、やりたいことがはっきりしている子ども、それから親御さんにとっては、「その仕事で安定した収入が得られるのか?」という疑問や視点は、ごく自然なものだと思います。
でも、10歳前後の子どもはどうでしょうか。
数字の大小だけで物事の良し悪しを決めてしまったり、「お金が高い仕事=良い仕事」「低い仕事=悪い仕事」というような早とちりをしてしまう可能性があります。
また、年収が家庭の事情を推測される材料になり、子ども同士の間で望ましくない比較が生まれてしまう可能性もあると思います。
こうした理由から、このサイトの職業ページには年収の具体的な数字を載せない方針としています。
ただし、このサイトで紹介している多くの職業は、厚生労働省が提供する公的なお仕事情報サイト「job tag」を参考にしており、job tag には職業ごとの平均賃金など、収入に関する公的データが掲載されています。
もし、将来を考えるお子さんが気になっていたり、親御さんとして詳しい収入情報を知りたい場合は、ぜひ job tag を確認してみてください。信頼できる数字を見ることができます。

AIやロボットについて
AIやロボットの話題になると「この仕事はなくなる?」「この仕事は増える?」という方向にいきがちです。でも、仕事が変わるのはAI時代だけではなく、コンピューターやインターネットが広がった時も同じようなことが起きていますよね。
結局のところ、仕事は需要があれば残り、需要がなければ続きません。ロボットがさらに発達したら、体を使う仕事も今とは違う形になっていくかもしれません。
だから、「この仕事は未来がある/ない」を今決めつけてしまうのは難しいですし、あまり意味もありません。このサイトでは未来予測よりも、「今どうやってその仕事に就けるのか」という現実的な情報を優先して整理しています。
最後に
このサイトは、やってみたい仕事にどうやって就くかをシンプルにまとめたサイトであり、考えるための材料を集めた場所でもあります。
知らなかった仕事を知るきっかけにも、進路を考えはじめたときの最初の道しるべにもなりますし、学校の進路相談で先生と話すときや、オープンキャンパスで質問したいことを整理するとき、あるいは塾や習いごとの先生と将来の話をするときにも役立つはずです。
でも、ここに書いたのはわかっている範囲の就き方であって、これ以外にも知らないルートがあるかもしれませんし、中には経験者しか知らない方法もあるかもしれません。
気になる仕事が見つかったら、まずはこのサイトで大まかな道筋をつかんで、より詳しい部分は本家のjob tagをはじめ、様々なお仕事サイトについて家族や先生と一緒に調べてみてください。
そして、また迷ったときや、新しく興味が湧いたときに、「そうだ!“どうやって?”を見てみよう」と思い出してもらえたら、この上なく嬉しいです。
2025年12月 どっくん